「湘南発 うた便り」
日本のかけがえのない文化遺産として童謡をうたい継いでいこう、と活動を続ける音楽家「おざきかよさん」の音楽コーナーです。
「湘南発うた便り」と題し、童謡を中心に幅広く楽曲に関する彼女の思いを発信していきます。古い歌あり創作曲あり。時には音源付き、ときには譜面付きでお届けします。声楽が専門なので、歌い方のアドバイスもあります。みなさんが歌で元気になれるように、世の中が歌で明るくなるように・・・・・・
おざきさんのそんな願いが少しでも叶えばいいですね。
プロフィル:おざき かよ(声楽家)
国立音楽大学声楽学科を卒業後、10年間、松田敏江(トシ)氏に師事し、童謡・唱歌・日本歌曲の歌唱法を学ぶ。日本の歌を中心とした演奏活動を行いながら、自宅音楽教室に於いて後進の指導にあたっている。
また歌・オカリナ・ピアノによる音楽ユニット「Akkord (アッコルト)」を結成、新しい可能性を探り活動中。数年前よりドイツの竪琴ライアーを学ぶ。その中で、小さな音量の繊細な音を、心の窓を開き耳を澄まして聴くという、音楽の本質を再確認でき、さまざまな音楽の体験が、自分の音楽の幅を広げることを実感している。
鎌倉童謡の会、大磯童謡サークル、NPO「日本童謡の会」藤沢童謡を歌う会 各講師。
「おざき かよの童謡畑」 http://ozakikayo.com/
第1回
ヤーコンという野菜があります。アンデス由来のキク科の植物で、サツマイモのような塊根(根っこ)を食べます。私はこのヤーコンを、数年前から庭で育てています。冬場に収穫します。
クリスマス過ぎのある日、その自作のヤーコンでサラダを作ろうと、包丁で千切りにしていました。そのとき日本の童謡には野菜、果物、そして魚の名前がタイトルになっている歌が、いったいどのくらいあるのだろう、とふと疑問が湧きました。そこで手持ちの楽譜を調べてみると、ありました、ありました。次のように、い~っぱい。
【野菜の歌】「トマト」「じゃがいもポテト」「いもほりの歌」「ねぎ坊主」「やきいもグーチーパー」
【果物の歌】「とんでったバナナ」「みかんの花咲く丘」「バナナをたべるときの歌」「リンゴのひとりごと」「びわ」
【魚の歌】「池のこい」「ツッピンとびうお」「飛魚ビュン」
ザッと調べただけでも、これだけ見つかりました。では、料理名が歌になっているのはどれくらいあるのでしょう?
調べると、
【料理名の歌】「おにぎり ころりん」「おべんとう」「アイスクリームの歌」「カレーライスのうた」「こんぺいとう」「パンのマーチ」
このように、食べ物がタイトルになった童謡が結構たくさんありました。やはり童謡は生活そのものなんですね。改めてそう思いました。
ところで、「福むすび」と言うオリジナル童謡があります。当サイト『食と農とeひとびと』に相応しい、心がふっくら、ほんわか温かくなる歌です。童謡詩人竹村忠孝さん作詞、おざきかよ作曲のこの歌を、どうぞお聞き下さい。
最後に、おざきの歌い方、一言レッスンです。
この歌は、♪ふくふくふっくら ふくらんで♪をクレッシェンド(だんだん音をふくらませて)し、♪たべればこころが よろこんぶ♪に十分思いをこめてうたうのがポイントです。
うたって、心ほっくり、温かな気持ちになっていただけたら嬉しいです。
第2回
「俵はごろごろ」
俵はごろごろ
お倉に どっさりこ
お米は ざっくりこで
ちゅうちゅうねずみは にっこりこ
お星さま ぴっかりこ
夜のお空に ぴっかりこ
この歌、子供のころから「どっさりこ」「ざっくりこ」「にっこりこ」「ぴっかりこ」という言葉が面白くて良くうたっていました。言葉とメロディが一緒になって頭に焼き付いています。
大人になり、声楽の恩師・松田トシ先生のご指導をいただくようになって、改めてこの作品と向き合うことになりました。新しい気持ちでしっかりと向き合い、たっぷりとうたいました。
松田先生には、声質に合っているという理由で入門当初から本居長世先生のお作品をたくさんご指導いただきました。如月社発行『本居長世童謡選集 七つの子』と『本居長世作品選集』の中から、仏教曲、合唱曲と御製御歌を除いたすべての童謡や歌曲をひたむきに学びました。
この曲譜集は、国語学者の故金田一春彦先生と、本居長世先生の三女本居若葉先生によって編まれたもので、実にたくさんの童謡、歌曲が収載されています。
約1年の間に、本居先生のほとんどすべての童謡と歌曲を学んだ私は、松田先生にリサイタルを開くことを許されました。
そして、1988年10月に開催したリサイタルのプログラムの約半分は、本居先生のお作品でした。
その半年後には「本居長世を偲ぶ会」に出演させていただきました。さらに、1995年10月には、「本居長世・野口雨情没後50年記念リサイタル」を開催させていただくことが出来ました。
その演奏会で「俵はごろごろ」をうたい、ご好評をいただいたのです。そんな想い出のいっぱいつまった「俵はごろごろ」は、私にとって、忘れられない大切な童謡のひとつなのです。
さて、「俵はごろごろ」の特徴は、詩の面から見ると、何と言っても擬声語や擬態語が多いこと。
詩人野口雨情先生は「ごろごろ」「どっさりこ」「ざっくりこ」などの幼子が喜ぶ言葉を巧みに用いて、子供たちの心を、ざっくりこ、どっさりこ、とつかむのに成功されたのですね。
また、曲の面から見ると、邦楽旋法によって作られていて、わらべ歌の旋律が生きています。
本居先生は“童謡の父”と呼ばれ、邦楽と西洋音楽の融合による、日本情緒豊かな曲をたくさん残されました。
最後に、<うたい方ひとことレッスン>です。
曲の冒頭にAndante と書かれていますが、これは「歩くような速さで」と言う意味です。
拍子は四分の四拍子なので、一拍目を他の拍より少し強めにうたいましょう。
そして、フレーズの最後は抜くような気持ちでうたうと良いでしょう。
フレーズのおしまいが強くなると、しりもちをついてしまいますね。
「どっさりこ」「ざっくりこ」などの擬声語・擬態語は、その言葉自体が面白いので、
子音を意識的にはっきりと発音してうたってください。
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